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読売新聞 夢をはっきりさせ 障害を言い訳にしない

▼YOMIURI ONLINE:

◇キャリアインタビュー

障害を言い訳にしない


島袋勉(しまぶくろ・つとむ)さん
 1963年、那覇市生まれ。20歳で車検センター会社創業。IT事業視察の帰りに、千葉県で事故に遭い、両下腿(かたい)切断、頭部挫創(ざそう)による高次脳機能障害に。2004年12月ホノルルマラソンに義足で完走。06年1月アルゼンチンの高峰アコンカグア峰(6960メートル)に両足義足で挑戦。二年前から「夢をあきらめない」というタイトルで全国で講演をしている。著書に「義足のランナー」(文芸社)がある。

 両足を突然の事故で失った経営者の島袋勉さんは、義足の登山家として小学校の時から抱いていたエベレスト登頂の夢を目指しトレーニングに励む。「人が物事をできなくなるのは、体のせいではない。夢を見失った時」と話す島袋さんにインタビューした。(小池俊幸)

読売2006.9・3.jpg20歳で車検センターを始めました。ゆくゆくは好きなコンピューター関連の会社を経営したいと思っていました。37歳の時、希望を胸にアメリカでIT事業の視察旅行をした帰りでした。千葉県内で事故に遭い両足切断、記憶障害などに見舞われました。経営を代われる者がいないという状況でした。

 痛みをこらえてリハビリをしていたある日、母に病院から電話をしました。母は、「痛い思いをして何も学ばなければ一生後悔するよ」と言いました。その時、自分は、特別な経験をしたので、そこからいろいろと学ばなければいけないと、強く感じるようになったのです。

 特に同じ病院で、首しか動かせない頸椎(けいつい)損傷の人が、リハビリして、口に棒をくわえてパソコンを打ったり、口にボールペンをくわえて字を書いているのを見た時に、心を動かされました。

 人が物事をできなくなるのは、決して体のせいではない。やろうという気持ちがあったらできる。将来の夢と希望があれば、どんな状態でも明るく生きられると感じ、自分はそのことを心がけようと思いました。

 今、私は義足をはいてマラソンができるようになりました。自分にとっては苦しいこと、できないこと、それをできるようになれば他のことは何でもできるようになるのではないかという思いで始めたのがマラソンです。自分の限界への挑戦でした。

 登山にも挑戦しています。私は小学校から抱いているエベレスト登頂の夢を実現したいです。その前段として高所に慣れるために、南米大陸最高峰のアコンカグア(6960メートル)に、今年1月に公募登山隊の一員としてチャレンジしました。義足をはいて5000メートル付近まで登りました。気圧が低い環境では、一番大きな問題は体中が大きく膨らむことです。義足に足が入らなくなり断念しました。

 来年の春ごろには、改良した義足や登山道具を使ってエベレストのベースキャンプまで、登る計画です。高所に義足などが合うかさらにチェックして大丈夫であれば、念願のエベレスト登頂にチャレンジしようと思っています。

 二年前に、倒産しそうになった会社を立て直したのを機に、講演を始めました。小学校で講演をすると、子供たちは、私の姿を見て何でもできるという気持ちになってくれます。その思いを作文にして送ってくれ、とてもうれしいです。

 経営者として、何があっても言い訳をしないということを心がけています。やはり自分のやりたいこと、夢をはっきりさせることがとても大事なことです。たとえ厳しい現状はあっても、障害を言い訳にしないことも大切だと思います。

2006年9月3日  読売新聞)


読売新聞インタビュー記事9月3日PDF.pdf 

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