スマートフォンの新型機種「iPhone5」の発表会
**************NHK***************
アップル iPhone5発表
9月13日 5時32分
アメリカのIT企業アップルは12日、スマートフォン「iPhone」の新型機種を発表し、これまでのモデルと同じように世界的なヒット商品になるかどうか注目されています。
アップルは12日、アメリカのサンフランシスコでスマートフォンの新型機種「iPhone5」の発表会を開きました。
新型機種は、2007年にiPhoneを発売してから初めてサイズを変更し、縦にやや長くなって画面が大きくなりました。
また、1つ前のモデルより薄くなり、20%軽くなっています。
また、最新の通信規格LTEに対応したことで、従来を大幅に上回る速さで大量の情報をやり取りすることができ、動画などを快適に見ることができるとしています。
さらに、携帯端末向けの新型の基本ソフトが搭載され、音声を認識する機能が向上したほか、アップルが独自に始めた地図サービスが使えるようになります。
アップルは、この新型のスマートフォンを今月21日から日本やアメリカ、ヨーロッパなどで発売する予定です。
価格は、最も安いモデルはアメリカでは199ドル、日本円で1万5000円余りで、日本での販売価格はそれぞれの携帯電話会社が発表することにしています。
アップルのティム・クックCEOは「iPhoneが登場してから最大の出来事だ」と話していて、これまでのモデルと同じように世界的なヒット商品になるかどうか注目されています。
「iPhone5」3つの特徴
今回発表された「iPhone5」には、大きな特徴が3つあります。
▽まず、デザインの変更で、縦に長くなり、画面がこれまでより大きくなりました。
アップルは、初代のiPhoneを市場に投入した2007年以降、画面のサイズを3.5インチに保ってきましたが、今回、初めてサイズを変更し4インチに拡大しました。
この理由について、発表会でアップルの幹部は「指で操作しやすいからだ」としていますが、背景には、動画が見やすいという理由からスマートフォン市場で画面の大きなサイズが主流になっていることが影響しているとみられます。
また、これまでのモデルより薄くなり20%軽くなっています。
▽次の特徴は、最新の通信規格「LTE」に対応していることです。
従来を大幅に上回る速さで大量の情報をやり取りすることができ、動画などを快適に見ることができるとしています。
▽最後に、携帯端末向けの最新の基本ソフトiOS6が搭載されたことです。
これによって音声を認識する性能が大幅に向上し、アップルが独自に始めた地図サービスが利用できるようになります。
また、世界最大の交流サイト「フェイスブック」と機能を統合し、iPhoneで撮影した写真を直接フェイスブックに投稿することもできるようになります。
「iPhone5」期待と課題
アメリカでは、今回の「iPhone5」について、メディアの多くが前の機種を上回る記録的な売り上げを予想し、回復が遅いアメリカ経済を押し上げる効果も期待されています。
その一方で、課題を指摘する声もあります。
今回の新型機種から対応するようになった最新の通信規格、LTEについては、技術的な特許を競争相手の韓国のサムスン電子が数多く保有しています。
サムスンが、アップルを相手取り、特許を侵害したとして裁判に訴える可能性を指摘するメディアもあります。
また、世界最大のスマートフォン市場、中国では、低価格の中国の会社の機種などに押されています。
アメリカの調査会社IHSアイサプライによりますと、ことし6月までの上半期に中国市場で出荷されたスマートフォンのうち、アップルのシェアは7.5%で、7位にとどまっています。
さらに、特許を巡りサムスンとの間で続く裁判が及ぼす、消費者への影響などの懸念です。
一連の裁判で、アップルの好感度が低下しているという調査もあり、裁判が長期化すれば、企業イメージや消費者の購買意欲にマイナスの影響を与える可能性があります。
ジョブズ氏死去後のアップル
アップルの創業者、スティーブ・ジョブズ氏は、去年10月、「iPhone5」の前の機種が発表された翌日に亡くなりました。
カリスマ経営者が亡くなったことで、アップルの株価は一時、下落しますが、その後、株価は、タブレット端末やパソコンの新商品を発表するたびに上昇傾向が続きました。
今月10日には株価は683ドルまで上昇し、去年10月からの上昇率は、80%にも上ります。
株価と発行済みの株式数を掛けた時価総額は、先月下旬、マイクロソフトが1999年につけた史上最高額を上回りました。
この間の経営を指揮してきたのが、ジョブズ氏からCEOを引き継いだティム・クック氏で、徐々に独自色も打ち出しています。
ことし3月、巨額の手元資金の一部を使い、17年ぶりに株主への配当を再開することを決め、株主に配慮する姿勢を示しています。
また、生産管理のプロとして知られるクック氏は、取引関係の見直しや透明化に力を入れていて、ことし1月にはこれまで非公表としてきた取引先企業156社の名前を公表しました。
そのうちの中国の生産委託先の工場で、長時間労働などの違法行為が明らかになると、その改善のためにことし4月、アップルの経営トップとして初めて中国を訪問しました。
さらに、競争相手でありながら、半導体や液晶などの重要な調達先でもある韓国のサムスン電子とは、特許を巡って裁判で全面的に争い、サムスンからの部品の調達を大幅に見直しているとされています。
世界のスマホ市場の動向は
アメリカの調査会社IDCによりますと、世界のことしのスマートフォンの出荷台数は、去年より38.8%増えておよそ6億8600万台になると見込まれています。
世界市場では、韓国のサムスン電子のスマートフォンが急速にシェアを伸ばしていて、ことし4月から6月までの3か月間のシェアは、サムスンが32.6%で、アップルの16.9%を大きく上回っています。
こうしたサムスンの攻勢に対するアップルの新たな一手が、今回の「iPhone5」です。
アップルは、法廷でもサムスンと争っています。
デザインなどの特許を侵害されたとして世界10か国で裁判に訴え、先月には、アメリカ、カリフォルニア州の連邦地方裁判所の陪審が、アップルの訴えをほぼ全面的に認める評決を出しました。
その後、アップルは、サムスンの8機種について、アメリカでの販売差し止めを求める仮処分を申し立て、新たにサムスンの主力機種を特許訴訟の対象に加える方針を示すなど、対決姿勢を強めています。
これに対してサムスンは、先月、アップルの長年のライバルであるマイクロソフトの新しい基本ソフト「ウィンドウズフォン8」を搭載したスマートフォンを他社に先駆けて発表しました。
これまでサムスンは、グーグルの基本ソフト「アンドロイド」を採用してきましたが、従来とは異なる機種を投入することで、特許訴訟の影響を避けるねらいがあるとみられています。
ほかにも、▽フィンランドのノキアや、▽現在はグーグルの傘下にあるモトローラといった携帯電話メーカー、▽アメリカのIT企業アマゾンなどが、画面を大きくしたり通信速度を早めたりした新製品を相次いで発表して競争は激しさを増しており、アップルが今回の新型機種でどこまでシェアを戻すのか、注目されています。
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