聖光学院が、日大東北を破り、05~12年の智弁和歌山の8年連続を上回る、戦後最長の9年連続夏の甲子園出場を決めた。主戦森久保翔也(3年)が6安打2失点で、準決勝に続く2試合連続完投。再三のピンチを、野手が好守で援護した。聖光学院史上最強の戦力で、悲願の大旗白河越えを目指す。

 聖光学院が戦後初の9連覇を成し遂げた。9度宙を舞った斎藤智也監督(52)は言う。「どうせなら前人未到のところまで行ってみようと、自分は励みにはしていた。でも選手には意識させたくなかった」。完投したエース森久保は「(9連覇は)少し頭にあったけど、勝つことは当たり前じゃない」。大きなプレッシャーから解き放たれた選手の顔には、涙と笑顔が浮かんでいた。

 「不動心」。斎藤監督が99年の就任以来、掲げてきた座右の銘だ。どんな試練でも意気に感じ、どっしり受け止める-。森久保がその言葉を体現するような投球をみせた。初回、緊張して球が上ずる。先頭に死球。さらに安打、四球で1死満塁とされ、併殺崩れで1点を失った。そこからが冷静だった。低めに変化球を集め、ランナーが出ても動じない。連投でも、9回に140キロを出すなど球威も落ちなかった。「最後は体が限界だったんですが...。1球1球、"今"に集中して投げていました」。斎藤監督が「何でこんなに落ち着いていられるんだろう」と驚くほどの集中力で9回107球を投げきった。試合後は、監督に思い切り抱きしめられた。

 日本一になるための練習を積んできた。斎藤監督は、島袋洋奨投手(現ソフトバンク)擁する興南に敗れた10年夏の準々決勝を教訓にする。「試合前に(興南監督の)我喜屋さんが『ここから3つ連投する練習をやってきた。(島袋の)真価を試す時がきた』とニコっと笑ったんです」。連投で春夏連覇した島袋のように、たくましいエースになってほしい。思いを込め、投球とダッシュを交互に繰り返す「インターバルピッチング」という厳しい練習を森久保に課してきた。

 「あれで体力がついたと思う」と森久保。豊富な投手陣の中でも抜群の安定感で、今大会4戦26回2/3を投げ抜いた。野手も堅守で支えた。バッテリーを組む佐藤都志也(3年)は「ピッチャーを助けるのが捕手の役目」と5、6回に見事なスローイングで走者を刺す。遊撃を守る藤田理志(3年)を中心とする守備は決勝まで6戦無失策。執念でサヨナラ勝ちした過去2年の決勝とは違う、地に足ついた強さを見せつけた。

 甲子園での過去最高は8強。斎藤監督は「8連覇して日本一になったことのない監督はいない」と自嘲する。だがこれまでの悔しさがあるからこそ「今までで一番可能性がある」選手とともに、本気で日本一を取りにいく。「今年は豪快だな、と言われたい。敦賀気比とやって11-10で勝つような」。9連覇の先の、東北初の優勝へ。ここから聖光学院の本当の勝負が始まる。【高場泉穂】