琉球新報 金口木舌
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琉球新報2005年11月24日掲載 金口木舌
「チョー」「ヤバイ」など日本語が最近、軽くなってきたが古来、日本には言葉に霊力が宿るという「言霊信仰」がある。吉凶にかかわらず、その言葉が本当になるという考え方だ。万葉集では「言霊の幸う国」と日本を呼び、言霊の働きで幸福になるとした▼そんな力を持つ言葉に、久々に出合った。二十日の東京国際女子マラソンで優勝した高橋尚子選手の言葉だ。「夢をあきめないでやれば、報われるというメッセージを伝えたかった」▼右脚に肉離れを起こしながら臨んだ大会は、アテネ五輪への夢を閉ざされたコースだ。二年前、失速した”因縁の坂”で、今回は優勝争いに決着をつけ、見事に復活した▼高橋選手の言葉に励まされた人も多いに違いないが、身近にもすごい人がいた。これも同じ日の中部トリムマラソンで、事故で両足義足になった那覇市の島袋勉さん(42)が10㌔の部で完走した▼一年前のこの大会で走ることに挑み、ついにはフルマラソンを五回も走った。今回は原点となった思い出のコースで自らの成長を確かめた。その島袋さんは各地の講演会で「夢をあきらめない」「できないことはない」というメッセージを送る▼体験に裏打ちされた言葉は、やはり他人を動かす力を持っている。
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