« 前へ | トップページ | 次へ »

産経新聞 「あきらめず 逆境楽しみ」東京マラソン 両足義足ランナー“完走”

産経2・19.jpg産経新聞 2007年2月19日掲載

あきらめず 逆境楽しみ

東京マラソン 両足義足ランナー“完走”

 3万人が都心を駆け抜けた「東京マラソン」の主役は、この日を楽しみに待った市民ランナーたちだった。制限時間はオーバーしたが、最後にゴールにたどりついた両足義足のランナー、島袋勉さん(43)は、切断した両ひざ下が圧迫される激痛に耐えての”完走”に、「時間外ですが、最後まで走れることができてうれしい」と晴れやかな表情を見せた。      (1面参照)

 

 18日午前9時10分、冷たい雨が降りしきる中、号砲が鳴った。

 「不自由な身体を理由に甘えると、環境の整った場所でしか生きていけなくなる。健常者と一緒に走り、自分で逆境を乗り越える方が楽しい」と話す島袋さんは、他の走者との接触を避けるため、ランナーたちが新宿・都庁前を走りすぎるのを待って、医療用の歩行捕助つえを使いながら走り出した。

 平成13年4月、列車事故で両足を失った。絶望感に打ちのめされそうになったが、義足が希望を与えてくれた。歩行訓練を積み重ね、走ることに挑戦した。「どんな状況でも決してあきらめない。走れないといわれると、余計にやってやると思う」。事故から4年弱でホノルルマラソンへの出場を果たし、12時間59分29秒で完走した。

 11回目とフルマラソン。だが、ペースは予想以上に速く、28㌔地点で制限時間を超え、交通規制が解除された。やむなく歩道を走る島袋さんに、見物客から「ゴーゴー島袋」「ファイト島袋」の大声援が送られた。

 長いランナーの列は、都心の名所を回るコースを埋め、ゴールの「東京ビックサイト」(江東区)には明るい表情が広がった。

 女子2位となったベテランの谷川真理さん(44)は「ボランティアの方々の笑顔に励まされた。雨は冷たかったけれども、東京の街は温かかったです」。3年前にがんの手術を受けた鈴木宗男衆院議員は「早期に発見すれば大丈夫だと、私が走ることで励みになれば」との思いから参加。「多くの人の激励に、都民の人情を感じた。皇居のお堀端から銀座、日本橋・・・と世界の東京の、いいコース.五輪招致の弾みになると思う」と感慨深げに話した。

 午後4時10分の制限時間が近づくと、石原慎太郎都知事が駆け込んでくるランナーとがっちり握手。ぎりぎりでゴールした兵庫県芦屋市の堀内信弘(42)、真理(44)夫妻に「頑張ったね」と声をかけると、2人は「完走できるかハラハラドキドキでした」と笑顔で話した。

 島袋さんが姿を見せたのは、その50分後。約30人の応援団が迎える中でゴールを駆け抜けると、大きな声援に包まれた。「来年も東京マラソンを走りたい」と話す島袋さんは、「エベレスト登頂にも挑戦したい」と宣言した。

(写真)力走する両足義足のランナー、島袋勉さん=18日午後、東京都台東区

(写真)浅草寺雷門前を通過するランナーたち=18日午前、東京都台東区

 

 

ご感想やメッセージを、コメントやトラックバックでお気軽にお寄せください。

トラックバック(0)

このブログ記事に対するトラックバックURL:

コメントする

プロフィール

講演依頼を希望される方へ