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朝日新聞 疾走 思い追い風【東京マラソン】 両足義足で昨年の雪辱

朝日2・18.jpg朝日新聞 2008年2月18日掲載

疾走 思い追い風    東京マラソン

夫への肝移植成功に感謝/両足義足で昨年の雪辱

 都心の目抜き通りを駆けてゆく人、人、人、人、人ー。17日、第2回東京マラソンに参加した市民ランナーたちは、様々な思いで首都の冬路に足跡を刻んだ。

=一面参照

 スタートから約3㌔の新宿・靖国通り。荒谷淳子さん(60)=千葉県市川市=の胸には「肝移植ありがとう」の文字があった。

 近くの慶応病院で7年前、重い肝臓病で余命3カ月と診断された夫、英二さん(57)へのドナーとなり、生体肝移植で夫は回復した。4年前、慶応病院前を走る別のマラソン大会に初参加。それ以来、マラソンを走るたびにつけるゼッケンだ。

 何人ものランナーから肝移植のことを聞かれ、励まされた。白内障で伴走者と走る。「伴走者にロープを託すと素直な気持ちになれる。ドナーの私が元気に走ることを夫も喜んでくれている」

 

 思い出の会社

 買い物客でにぎわう銀座4丁目。今井憲夫さん(59)=大阪市=は銀座松屋を見上げた。衣料メーカーに勤務していたころ、よく営業に訪れた。

 約30年のサラリーマン生活のうち20年弱を東京で過ごしたが、01年に会社が倒産。出身地の大阪で扇子を販売する仕事を見つけ、単身赴任している。「思い出の地をめぐり、元気な姿を見せたい」と出場した。

 自分が売り込んだシャツが店頭に並んだ日本橋高島屋。同僚と酒を交わした東日本橋・・・・・・。「目抜き通を主役のように走れて最高でした」

 

 区切りに治療

 午後一時半すぎ。東京ビックサイトのゴール地点に駆け込んできた藤崎奈津子さん(35)=東京都江戸川区=に、一人息子の優太君(7)が抱きついてきた。

 約10年前、献血の際にC型肝炎ウイルス感染がわかった。副作用を伴うインターフェロン治療は「怖い」とためらっていたが、「この大会出場を区切りに挑戦しよう」と決めた。「今日頑張ったことを胸に、治療にのぞみたい」

 スタートから6時間28分。ガチャリガチャリと音を響かせ、両足義足の島袋勉さん(44)=那覇市=が入ってきた。

両手の補助つえを前に出し、義足を引きつける独自の走法。昨年できなかった完走を果たした。

 01年、列車事故で両ひざ下を失った。事故後3ヶ月で始めた義足生活で歩ける喜びに気づき、「一番苦手なことができれば何でもできる」と走り始めた。「どんなに苦しくても続けることを学んだ」と笑顔を見せた。

 

 約束した完走

 制限時間7時間の22秒前、フルマラソン完走者2万6672人の最後にゴールしたのは山田晴彦さん(34)=東京都世田谷区。よろめきながら、一歩一歩前に進んだ。「途中で子どもに完走を約束したことを思い出し、走り抜けた」

写真:手を振りながらスタートする市民ランナーたち=17日午前、東京・新宿で、中田徹撮影

 

 

 

 

 

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