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志高く生きるーいのち輝かせてー

kokorozasitakaku.JPG元山口県立高等学校長 佐古利南講述録

「志高く生きる ーいのち輝かせてー」P21~

最も困難なことを選び取る  ~島袋勉さんのこと~

 それは,沖縄で「ラシーマ」という自動車の整備工場を経営しておられる島袋勉さんのことです。島袋さんは今から10年程前,アメリカからの帰路,成田空港近くの踏み切りで転倒し,頭を強く打って意識を失ったのです。そこに電車が入ってきて両足切断という大変な事故に遭われたのです。障害はそれだけではありませんでした。頭を強打したためほんの少し前のことが覚えられないという記憶障害,さらに視神経にも異常が出て,モノが二重に見える福祉の障害と,二重,三重の障害を負われたのです。

 しかし島袋さんは負けていませんでした。懸命なリハビリ simabukuro   kokorozashi.JPGを続け,2年後に社会復帰して倒産寸前になっていた会社を立て直されたのです。

 そして今,両足義足の自分に最も困難なことは長い距離を走ることだと考えて42,195キロのフルマラソンに挑戦し続けておられます。

 「両足義足で長い距離を走ることは不可能。そのような無謀なことをすれば義足との接合部位が傷ついて義足も履けなくなる」という医師や義足を作る業者が止めるのを振り切ってのことです。

 「夢をあきらめない」

 駄目だと分かればそれを補う方法を考えればよい。

 「義足の接合部に負担がかかりすぎるのであれば,杖を shimabukurosan    kokorozashi.JPGつき足への負担を軽くしながら走るのだ」とホノルルマラソンを完走したのが最初でした。依頼,杖を ついてのマラソン数十回。全て完走しているのです。

 「なぜマラソンを?」の問いに,島袋さんは「マラソンは両足義足の私にとって最も苦手で苦しい事です。それができれば他の困難は楽になります.どんな時でも決して諦めない自分を作るためです」と答えています。

 

  この島袋さんをある中学校にお連れした時のことです。講演のあとの質疑応答の時期に,女生徒が「島袋さんは自分のことが好きですか」と訊ねたのです。それに対して島袋さんは「はい,好きです」と即答しておられました。

 島袋さんのように,あえて最も困難なことを選び取り,様々 shimabukurosan     kokorozashitakaku.JPGな工夫を凝らしてそれを克服する人は,自分のことをダメな人間だと自己否定することは決してないと思います。

 後で聞いた話によると,その女生徒は家庭的に恵まれず,親に反発して家出などの問題行動を繰り返していたとのことでした。そして,そうした自分がイヤでイヤでたまらなく思っているとのことでした。彼女の質問には,そうした嫌な自分から抜け出たいとの思いがこめられていたのです。

 この女生徒に,島袋さんからの「困難なこと、嫌なことを正面から引き受けるとき大きな成長が約束されます。自分のことが好きになります」とのメッセージが届いていればと願わずにはおれません。

*****平成22年4月30日初版発行より*****

       

★佐古利南(さこ としなみ)先生 プロフィール
山口県岩国市出身。昭和40年早稲田大学教育学部卒業と同時に山口県の公立高等学校に奉職。以来、37年間、山口県下数校で勤務、主に日本史を担当、「文化史をどう扱うか」「何故視聴覚教材か」「郷土史に教材を探す」「金子みすず教材化の試み」「日本史テスト問題作成雑感」等のレポートを各種研究録に寄稿するなど授業研究に取組。また、部活動では、弓道部の顧問として部員の指導に当たり、昭和58年の群馬国体にて少年女子チームを全国優勝へ導く。在職中は、山口県立防府高等学校教頭、山口県立山口高等学校教頭及び山口県立宇部中央高等学校長などの要職を歴任、平成14年定年退職。退職後は地元で「岩国掃除に学ぶ会」を立ち上げ、代表世話人として活躍する一方、教育問題に関する講演活動を多方面で行う。また、最近では子供たちを励ます言葉を刻んだ石碑の建立を企画し、その実現に向けて精力的に活動中。

 

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