太陽表面で局所的に電磁波が異常に増大する太陽フレアという現象は、「並み」のクラスならばそれほど珍しいものではない。各地の天文台では2010年だけでも約70回記録されている。しかしそうした太陽フレアは、「巨大」フレアの10分の1程度でしかない。2007年以降、巨大フレアが発生したのは2回だけだ。
今回の太陽フレアで科学者が衝撃を受けたのは、フレアの発生自体ではなく、噴き上げられた物質の異常な多さだった。その物質は拡散し、太陽表面の約半分に降り注いだ。太陽フレアと同時に粒子が宇宙空間に飛び出す現象は、コロナ質量放出(CME)と呼ばれる。
NASAの太陽観測衛星ソーラー・ダイナミクス・オブザーバトリー(SDO)プロジェクトに携わる天体物理学者フィリップ・チェンバリン(Phillip Chamberlin)氏は、「まったく驚かされた。太陽表面のこの場所ではたいしたことは起こっていなかった。ところがこれが太陽の奥からやってくると、突然フレアが発生し、粒子が大量に噴出した」と話す。「これほど巨大なCMEは見たことがない」。
宇宙空間に放出されたエネルギーと電子、陽子の質量を計算するには少し時間がかかるとチェンバリン氏は言う。それでも、粒子が広がった空間の体積は地球の体積の数百倍以上になるとのことだ。
チェンバリン氏によると、太陽の右の縁付近から噴出した粒子は宇宙空間にまき散らされ、地球を直撃することはないが、地球の両極付近でオーロラを明るく輝かせる可能性はあるという。
しかしチェンバリン氏は、宇宙天気の専門家は今後の太陽活動について心配していると注意を促す。
太陽活動には、太陽表面の複雑な磁場により生じる11年の周期があるが、その周期の極大期が2013年後半か2014年前半に訪れる。この時期の前後は磁気の乱れが生じ、厄介な太陽嵐が発生しやすくなる。「(巨大)フレアが、2年に1度ではなく、2カ月に1度観測されるだろう」とチェンバリン氏は言う。
その巨大フレアの1つが地球に面した場所で起こり、CMEが真っ直ぐ地球に向かってきたら、荷電粒子が人工衛星の部品に衝突し、一部をショートさせ、その部品が故障する可能性もある。
地上に過剰な太陽粒子が降り注ぐと、送電線に余計な電流が流れて過熱する。実際1859年に太陽嵐が発生したときには電信線が炎上した。この種の災害を防ぐため電力会社は送電線の負荷を分散しているが、活発な太陽嵐が発生すれば変圧器がパンクして停電につながる恐れもある。とくに、6月初めからアメリカ東部を襲っているような熱波の時期は危険だ。
「送電網には相当な対策がとられているとはいえ、それでも影響を被る危険性はある。何らかの深刻な事態に陥るかもしれない」とチェンバリン氏は述べた。
Image courtesy SDO/NASA
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