« 前へ | トップページ | 次へ »

「辛いときに親切にされるとものすごく嬉しい。そうした感謝の心も学べる...

[ ]

七福醸造株式会社の犬塚敦統会長が社員教育の一環としてはじめられた『三河湾チャリティー100㎞歩け歩け大会』・・・。そのきっかけや続けてこられた想いを昨年の「一倉沖縄OB会」で犬塚会長にお会いした際にも聞かせていただきました。

100㎞歩く大会はじめられたのもすごい事ですが,毎年続けておられることに感動・・・。

『三河湾100㎞歩け歩け大会』を開催し続けておられる理由がOBT人財マガジンでも紹介されていました。

 「辛いときに親切にされるとものすごく嬉しい。そうした感謝の心も学べる...」と,語る犬塚会長。

 ******************OBT人財マガジンより**********************

逆境の中での気づき"が人を育てる

『三河湾チャリティー100km歩け歩け大会』では、制限時間30時間で100kmを歩く。1996年に社員教育の一環として始め、17年の歴史を数える2012年には外部参加者も含め歩者1581名、スタッフ92名が参加する一大イベントとなった。

そうして社長の後ろ姿を見せるということと、もう一つ、教育には"逆境の中での気づき"が大切です。そのために、うちでは毎年『三河湾チャリティー100km歩け歩け大会』を開いているんです。

────メディアにも取り上げられた有名な大会ですね。始められたきっかけは何だったのでしょう。

ある知人の社長が、男性だけで50kmを歩く会をやっていると聞きましてね。「ものすごく感動するよ」と言うのでそりゃ面白そうだなと、うちも春と秋に30km、女性社員も入れて歩き始めた。それが始まりです。

────長い距離を歩き通す挑戦が、"逆境"の体験になるということですね。最初から"逆境の中での気づき"を意図されてのことだったのですか。

いや、はっきり意識したのはもっと後です。何回かやってみて「ああ、これが教育の本質か」と思い至ったんです。どいうことかといえば、例えばうちの工場長が大学4年生の息子と100kmに挑戦したときのことですが、ずっと息子を引っ張って歩いていた工場長が、97kmの休憩ポイントでマッサージを受けたとき、もう足を触られただけでも痛いから揉まれるともっと痛くて、みっともないと思ってもうめき声と涙が出て。悲鳴を上げて、手を一寸離した時に泣きながら、"ありがとうございます"と何回も繰り返していたんです。

それを見た息子が、「そんなに痛いの?」と。考えてみたら、それまでの休憩ポイントではずっと息子にマッサージを受けさせて、父親はいっぺんも揉んでもらってない。コースの途中でも息子を道端に座らせて、「頑張れ」と足を揉んであげてね。それを息子は、親父が強いと思っていたんです。ところが今、涙をボロボロ流している。その姿を見てドキッときたんでしょうね。「親父、申し訳ない」と息子も最後の3kmを泣きながら歩いていました。これが感謝の心、親子の絆ですよ。

今は参加者が1500人を超える大会になりましたが、これが恐らくちょっとくらい苦しい大会ならこんなに増えません。100kmでは極限を経験しますから、何回やっても気づきがあるし、感動する。そういう心からの感動の涙を何回流させるかが、社員教育なんです。

体で理解したことは、いつまでも心に残る

────今は、日常生活で逆境に遭うことはあまりないですよね。それをあえて逆境に追い込むことで、人は変わり、成長するということでしょうか。

そう。30kmでも歩いてみるとわかりますが、ものすごく辛いんです。100kmを歩くときは、40kmから60kmの間に精魂を使い果たすんですよ。あとは"思い"だけで歩く。この辛さが、たまらなくいいんです。普段だと親切にされても「ありがとう」で終わることも、辛いときに親切にされるとものすごく嬉しい。そうした感謝の心も学べるわけです。

挫折も経験できます。初めて挑戦するときは、むしろ100km歩けなくて挫折した方がいいですね。そうすれば悔しくて、次の年は必ずリベンジできる。それに、そうした挫折体験があると人は優しくなれるんですよ。

────仕事ではミスを避ける意識がどうしても働いて、失敗や挫折を経験することは少ないと思いますが、「100km歩けなくて辛かった」という経験にも、人を変える力があると。

そう。社員教育のために法人として参加する会社もたくさんありますが、ある社長が社員と一緒に歩いたんですよ。で、社員が先に挫折した。そうしたら、社長は「たるんでいる」と言うわけです。挫折した社員にしてみたら、もうどうしようもないでしょう。私は100kmを2回挫折していますから、挫折した子を励ますのはものすごく上手です。その社長は恐らく、挫折を知らないんでしょうね。それでは社員が可愛そうですよ。だから逆境が大事なんです。さんざん辛い中で挫折すれば、人はみんな優しくなるんです。

────そうすると職場に戻ってからも変化がありますか。

まるっきり変わりますね。思いやりがものすごく出てくる。それに、これだけの規模の大会は連携してやらないと運営できませんから、みんなの連帯も生まれます。

そういった体験をしながら、頭ではなく体で理解させるわけです。ですから、うちの社員教育はすべて"首から下"。首から上で競争しても勝てないから(笑)、首から下の教育しかやりません。その代り、思いやりや心の温かさ、人のためを思える心の豊かさだとかね、体力とか根性とか、連帯感、団結力はものすごくある。うちは"心"で勝負しているんです。

────それが社員の方々の幸せにもつながっていくと。

そう。社員教育の目的は"人間をつくること"にあります。社員に幸せな人生を送ってもらうにはどうすればいいか、隣近所の人や関わる人たちと仲良くやっていけるようにするにはどうすればいいか。それはノウハウやテクニックじゃない。人間の基本を磨かなければいけないんですよ。

ご感想やメッセージを、コメントやトラックバックでお気軽にお寄せください。

トラックバック(0)

このブログ記事に対するトラックバックURL:

コメントする